阿賀野上ノ城の事件簿

昔は名探偵でした。

炒飯 4日目

炒飯以外何もない日々もここまで続くと精神がやられるようになってきている。昨晩は虚無感でなかなか寝付くことが出来ず、起きたのは11時を過ぎてからだった。

 

5月5日12時30分ごろ。眠い目をこすりながらチッキンの前に立つ。今日も今日とて炒飯である。母に「今日も炒飯作るから」と告げると、「今日も二人分作ってくれ」と言われた。正気かと思った。既に4日連続で自作の炒飯を食べ続けている俺がいうことでもないが、舌が狂ったのではないだろうか。

 

さて、昨日に引き続き課題は味付けの薄さだ。コショウ、しょうゆ、万能中華のもとの三種の神器を駆使しても理想の刺激を得られず、途方に暮れていた俺に救いの手を差し伸べてくれたのはまたしても母だった。とにもかくにもレシピといこう。

 

〇ご飯 300g

〇卵 三個

〇ニラ 適当

〇サラダ油 大さじ3杯

〇しょうゆ 適量

〇塩 小さじ1/3 杯

〇香味ペースト 適量

 

コショウと万能中華のもとという、刺激的な味付けを与えてくれる二つをレシピから削除し、代わりに現れたのがクックドゥの「香味ペースト」だ。

 

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イケメンアイドルの山田涼介君がCMで宣伝していることで有名な代物。昨晩母が買ってきてくれた。キャッチコピーは「味付けこれ一本!」である。母曰はく、俺が求めている刺激はこいつで達成されうるのではないのかとのことだ。試してみる価値はあるだろう。キャッチコピーを信用して、これ一本で勝負してみようではないか。それにしても「万能中華のもと」の三日後にはさらなる強力な「香味ペースト」が現れる、ドラゴンボール並みのパワーバランスインフレーションである。

 

同じことを繰り返す必要はないだろう。途中まで昨日と全く同じ工程を踏み、最大火力を以てしてたまごご飯を炒め続けること10分。いよいよ秘密兵器の力を試す時がやってきた。水気を失い、焦げ目がつき始めている卵ご飯に香味ペーストを加える。約18センチメートルほど入れ、よくかき混ぜる。これまでにないほど強い香りが立ち上った。思わずむせてしまうほどだ。なるほどこれは強い。炒飯一つとっても広い世界があるものだなどと感心する間もなく、スプーンで味見をする。フライパンから出したてのご飯はとても熱い。しかしその熱気に負けないほどの濃さで辛みが舌を刺激してくる。申し分ない。さすが山田君が宣伝しているだけはある。これからクックドゥHey! Say! JUMPは贔屓にするとしよう。とどめにニラをふりかけ、しょうゆを一周だけさせてよくかき混ぜて一丁上がりだ。

 

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見た目はびっくりするほど昨日と変わらない。しかし、ご飯の味は各段に成長を遂げていた。旨い。4日連続の炒飯で辟易している俺の舌でもわかるほどにはいい味が出ている。母も(いつものことではあるが)「美味しい」とご満悦の様子だった。全体としてはまた一ついいものを作ることが出来たのではないのだろうか。

 

ただ、今日のご飯は二日目や三日目に比べてすこしパラパラぐあいが弱い。時に粒同士がくっつきあったまま焼き目がついているものある。原因としては卵とご飯を十分に混ぜ合わせていなかったことがあげられるだろう。味の濃さに気をとられ、足元をすくわれたわけだ。

 

今更思い直したが、もっと具を詰めるべきではなかったのだろうか。肉、ニンジン、グリーンピース、いくらでも追加できたが、なぜか具はネギかニラの一点張りだった。やはり理想の炒飯への道は遠い。課題はいくらでも残っている。

 

だが、炒飯と虚無に満ちていたGWも残すところあと一日である。俺は明日の最終日、一体何をすべきなのか。香味ペーストに浸食されながらもわずかな旨みを残していたご飯を噛み締めながら俺は考えた。